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カエルのケロケロレポート 2000年10月17日

脳死臓器移植勉強会、臓器移植法の見直しについて

またまた衆議院議員会館に行ってきましたよ。

前回の、4月に行なわれたシンポは第2会館でしたが、今回は第1会館です。第1は第2のもろ隣にあります。しかも建物構造もほとんどおんなじ。1階部分だけしか見てないですが、瓜ふたつの双児ちゃんってかんじです。双方とも、入り口前の駐車スペースには黒塗りの車がうじゃうじゃいます。国会議員の人って全員黒塗りに乗るの?それとも党の主導者とか一部の議員だけ?なぞです。誰か教えてください。よく選挙期間中、街を自転車で走ることで自分の庶民っぷりをアピールして「政治家と市民との壁をなくしましょー!」って訴えてる候補者がいますが、結局政治家になっちゃえば黒塗りに乗るのでしょうか。それとも、あえて自分で運転するとか地下鉄で通 うとかで黒塗りを拒否してる議員さんもいるんでしょうか?そういえば、元大阪府知事横山ノックは、例の自転車作戦を選挙で展開してましたっけ。だけど、当選後は黒塗りから降りるとこテレビで何度も見ましたっけ。「選挙」っていったい何なんでしょ・・・。「国民にまん延してる政治不信」ってよく言われるけど、政治の玄関口である「選挙」ってのがまず、うさんくさいからとも言えそう。と、ここまで言うのも、黒塗りってなんかムカつくんですよ(嫉妬)。ボディに光が反射してピカピカ輝いてるし、後部座席なんか広くてふわふわで、だけどきっと全然揺れなくて、レースのカーテンで「動く応接間」気取りで(羨望)。いちどくらいボクを乗せてくれたっていいじゃないですか?どこか遠いところまで、やってくれよ。

なあんて、そんな欲望と日々闘いつつ、今日も張り切ってレッツレポート!

と、いいかんじではじめたいのですが、今回はちっともいいかんじではないのです。正直に申しまして、今回はレポレポするのもやんなっちゃうくらい「つまんない」んです。そう、今回の「脳死・臓器移植勉強会」はつまんなかったんです。どんな風につまんなかったのか、また、どうしてそんなにつまんなかったのか、ご説明しましょう。

今回の勉強会を主催したのは大本教=人類愛善会です。まず、会場のドアを開けてびっくり!8割以上の人々がばっちりタスキをしているのです。おそらく彼らは大本教の信者の人々、同時に人類愛善会の方々です。タスキには『「脳死」は人の死ではありません』という言葉。前回の集会とうって変わって、今回はゴリゴリ反対ムードだぞ。そう直感したカエルです。配られた大本教の冊子によると、「脳死は人の死ではない」という根拠は次のようになるとのこと。「大本教義の全体−とりわけ死生観、霊界観、人間観など−にもとづくが、それはこれらの教示が一教団の真理のみでなく、出口聖師が霊界探検でえた客観証拠であり人類共通 の普遍真理とみているからにほかならない」確かに、宗教は科学が見捨ててかえりみない人間の死後のことに意味をもたせ、人々の心身に平安を与えます。だけど、とりあえずいまんとこ宗教とは距離を置いてるボクにとって、彼らの言葉はカエルの耳に念仏状態。

勉強会のメインスピーカーは5人でした。藤田保険衛生大学名誉教授の渡部良夫さん。人類愛善会編集の『異義あり!脳死・臓器移植』(天声社)という本を監修された人です。そして、脳死臓器移植による人権侵害監視委員でもあり、脳死臓器移植に反対する関西市民の会の岡本隆吉さん。この人は、今年当選した衆議院議員阿部知子さんの秘書の方でもあります。そして、東京水産大学助教授の小松美彦さん。この人は、森岡さんと同業者の生命倫理の先生で『死は共鳴する』(勁草書房)の著者の人。密教21フォーラム(真言宗智山派)の磯山福正さん。この人は僧侶の方です。そして最後は人類愛善会・生命倫理問題対策会議推進委員長の阿比留晴源さん。この人からは「霊界」等の宗教用語がポンポン出てきて、有り難いお説法を聞いてる気分でした。けろ〜ん。

しかし、中でも注目すべきは、小松美彦さんです。この方は歴史的な立場から、脳死状態は人間の死として認められないとして、一貫して脳死臓器移植に反対しておられます。小松さんは、医療現場で行なわれようとも法律で訴追をまぬがれようとも、脳死移植という行為は人を殺していることに他ならない、と言います。

そして、 小松さんは「大阪府立大の私と同年代の若手の方」と森岡さんを呼称して(森岡の「も」の字も出さず)、森岡案のことも批判しておられました。小松さんは自己決定にもとづく本人の意思重視の森岡案は、町野案よりマシだと言います。ただし、あくまでも「マシ」なんだそうです。「私から言わせれば、朝日新聞社の『論座』の対談では、これらふたつは同じ対立の土俵の上に立っている。もうひとつの案(森岡案)は町野案の年齢幅を拡大するだけ。」小松風に言えば「殺されてしまう人間の枠を拡大するだけ。だからそれは許せるものではない」そうです。きびしー、小松さん。

そしてこう続けます。「8月に町野案が出たとき、厚生省は『必ずしもこの案が法案になるわけではない』とことわり書きをした、ということがマスコミに流れました。最初から町野案のような過激で強烈なものがでてくるのはわかっているのです。向こうは、もうちょっと緩やかなこの程度の案はどうだろうと、こちらが言うのを待ち望んでいるのではないか。町野案はおとり的なものです。」小松さんは「府立大の若手の方は、町野の罠にまんまとのっかっている」と容赦なくピシャリ。そして「別 にその人(森岡さん)である必要はないわけです」と、さりげなくフォロー。「これ以上この法を拡大させない対案を出していくべき」と締めくくっております。つまり小松さんは、町野・厚生省陣営の魂胆にのせられて、これ以上臓器移植法が拡大してしまうのを恐れているのですね。小松さんにしてみれば、脳死臓器移植は「殺人」なんだから森岡案だって許せないわけです。

そんなこんなで今回の勉強会は、さながら反対派の結束会なのです。町野案に反対なのは、断固反対派も慎重派も同じなのに、分裂しちゃってるもんだからカエルから見たら、なんだか内輪もめ状態。あーあ・・なんて残念がりながら、凹みかけておりました。しかし、見どころはここからだったのです!出席した議員の方々の反応です!ギャラリーのほとんどはタスキをかけたゴリゴリ反対派のみなさま。さて、出席議員はどう出るか?!

まずは、民主党の金田誠一さん。金田さんは移植条件付きOKを主張している人です。脳死を人の死としない「金田案」ではありますが、脳死臓器移植は行おうとするもので、移植廃止そのものを主張してるのではないのです。しかし、ここはゴリゴリ反対集会。さすがは政治家、口がうまいです。金田さんはまず自分が梅原猛氏を尊敬しているという話題から切り出します。移植断固反対派の人々を前に、金田さんは「脳死は人の死ではない」という自分の主張を、しつこく強調。「梅原先生はもう2度とお元気になることはないと確実に判定された脳死の方が、臓器を提供したいと希望することを菩薩行だとしていらっしゃる。私どもはそれが殺人、あるいは自殺ほう助ということにならないよう、本人の意思を原則とする立場で法律を作りました。このこと自体、皆さんのお立場からするとそれでも反対だろうと思います」と、これ以上、反対派同士の立場の差異には深く言及せず、反対派同士の溝を広げるような発言はしていません。そして金田さんは続けます。「私どもの法案は衆議院で否決されましたが、参議院では半分ぐらいとりいれられて、脳死は人の死であるという中山案と、死ではないという私どもの案のちょうど中間のような案が生きているわけであります。できることなら、皆様と力をあわせてがんばっていきたい。幸いなことに今回阿部知子先生がいらっしゃっいます。専門家ということで非常に頼りにしております。中川智子先生もおいでですけれども、そういう有志でがんばっていきたいと思っております。」と脳死臓器移植断固反対の立場にいる阿部知子さんのこともサラリと流します。そしてぬで島さんの今月号の『世界』論文のことに触れて、「ヒト組織のほうの法制定もしなければならない」と話をすかさずそらします。ぬで島ネタなら断固反対の人々ともばっちり共有できますもんね。うーん。話のもっていきかたが、さすがに国会議員さんです(苦笑)。

話の巧さは阿部知子さんも負けてはおりません。「私は人類愛善会主催の講演会に一番呼んでもらったのではないか。実は私は金田案にも中山案にも反対の立場にいるのです」と、のっけからタスキのギャラリーの人々を深〜くうなずかせて、ブイブイとばします。「どっちにも賛成しない人は他にもいます。社民党の土井たかこさん、自民党の田中真紀子さん。ただ、現実の妥協点は金田さんたちが作ってくれました。国会は数の論理で動いていますからね。ただ、手加減してやると絶対にそれ以下に落ちていきますから、言うべきことは言わなきゃいけない」とやんわり金田批判を展開。しかし、批判もここまでどまり。あとは小児科医である自身の立場からの発言へとサラリとスライド。「今の国会は『子ども狙い国会』なんです。教育基本法にしても少年法改悪にしても、子どもの自由な発想や冒険を奪い、死ぬことすら手玉にとろうとしている」とご立腹。「死ぬときくらい自由がいいんです!」というお言葉には激しく同感です。でも、その後説教モードに・・・。「子どもが臓器を提供したいと言っても、本人意思があろうとも、世の中にはやっちゃならんことがある。大人がやってはならない規範を作らなければならないんです」と脳死臓器移植を「売春」と同等に並べて、いさめてます。「かつて死んでいった子どもたちが『先生がんばって』って頭の上の方で言っているような気がするので、皆さんとがんばれると思います」とおっしゃる阿部さんのお立場もよくわかります。幾つもの幼い子どもたちの死を見てきた阿部さんの深い深いお言葉です。でも、脳死臓器移植は、売春とは違うよぉ。

金田さんと阿部さんの確執は露骨でした。お互いに牽制しあいながらも、フォローは欠かさない。両者の間に橋はかかるのでしょうか?今回は、政治家のテクを見てしまった!そして駆け引きも!あと、霊界も(てへっ)!最初から最後まで「脳死=殺人です」とか、「脳死臓器移植は撤廃すべきです」とか、「自分の身体は自分のものっていう自己決定は、人間の思い上がり」なんてセリフがポンポン飛び交っていた今回の集まり。ひとつ心配なのは、断固反対派と慎重派が分裂しちゃってることで、推進派に優位 に働いてしまわないか、ってこと。

その他、挨拶した議員の人は社民党の衆議院の中川智子さん。とってもハイテンションでパワフルで金田さんくらい話のうまい人。「中山さんはダーティーなイメージ」など歯に衣着せぬ 語りっぷり。あと、今年入ってきた同じく社民党衆議院の北川れん子さん。その他、途中で帰ってしまったが、顔を見せた議員の人は衆議院の遠藤てるひこさん?、参議員の竹村泰子さん、大森礼子さん(代理出席)、うえだむねのりさん?(代理出席)です。

今日、2000年10月17日の朝日新聞社会面にはこんな記事が載ってました。


子どもの脳死移植 患者団体など厚生省に要望書

子どもからの臓器提供もできるように法改正を求める患者団体と、脳死臓器移植に反対する団体がそれぞれ厚生省を訪れ、厚相への要望書と署名を大沢範恭・臓器移植対策室長に渡した。法改正に向けた要望書を出したのは、全国心臓病の子どもを守る会、日本移植者協議会など8団体がつくる臓器移植推進連絡会。現行法ではできない15歳未満の臓器提供が可能になるよう、6歳未満の脳死判定基準の制定などを求めた。

一方、宗教法人大本教の外郭団体である人類愛善会は、15歳未満の子の臓器提供を認めないなどとする要望書と、臓器移植そのものに反対する45万の署名を提出。昨年提出分と合わせ87万人になった。


移植推進派と反対派の構図は、このようにとっても分かりやすいのです。でも、その間には、推進・反対派にも負けず劣らずいっぱいの「?」を抱える慎重派がいるはずですよね。慎重派はもっとも数が多いから正当だとか、疑問を抱えているから高尚だ、とかそんなことじゃないんです。推進派も反対派も、自分の意見を主張しまくるだけでなく、もっとたくさんの議論すべきポイントと、「?」の立場でも議論に入り込めてしまえるようなゆとりある空気を提供してほしいのです。その点、今回の集会は、あれこれ知的刺激で揺れ動くだろうはずの「勉強会」とは名ばかりの、有無を言わさぬ雰囲気で異論を排除しようとする威圧的な「内輪集会」でありました。

ひとつお願いです。森岡さん、次こそは議員会館で開かれる集会に行ってみてはいかがですか?論文を雑誌やらインタネやらに発表するのももちろんいいけれど、いつも森岡さんの話題はでるものの、インターネットを参照くださいとかそんなんばっかですよ。やっぱ実際ここに国会議員が来てるんだから、このチャンスを使わない手はないですよ。ここはひとつがっついて、国会議員が帰らないうちにメインスピーカーのマイクをぶんどって、学者っていうブランドをフル活用して圧力かけちゃう勢いでないと。

・・・・と、いつになくひとり強気&辛口なカエルでした。レポートはこれでおしまいです。読んでくださってありがとけろ。

 

・おまけ・

小松さんフリークって、とってもいっぱいいそうなのです。なぜなら氏の雰囲気は一言で言うと「ダンディ」だから。そう。めちゃめちゃかっこいいおじさまなのですよ。さあ、この事実を知って著書『死は共鳴する』(勁草書房)を読んでみたくなった人も多いはず(笑)。つまんなかったのは、あくまで今回の「集会」。できることなら、ゴリゴリ反対のそのわけをもっともっと(×100)知りたかった。だから勉強させていただきます。勉強嫌いだけど、気合い入れて勉強したいと思います。 ときには「反対」のタスキをかけちゃうくらいのめりこんじゃう勢いで。

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