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『かわいいホロコースト』
立ち読みページ


あくまでチラ見せ。もっといい詩は本書でね!


もはや花の中で暮らせない

ナンセ──ンス!
ここに─、集結された─、すべての─、
学生くん、労働者くん、同士諸君!
我々は─、人間と─、小鳥との─、中央に─、発現した─、
勇敢なる─、戦死者である!
現実を─、総括せず─、虚妄から─、逃げ去りもしない─、
突き抜けた─、確信の杭を─、この世界に─、打ち込むはずの─、
勇猛なる─、詩人である!
逃げ去る恋よ!
神秘を暴こうとする、しらけた反応の闇!
いきなり炎のごとく!
著しくぎらつく、入れ込んだ回答の暁!
それらすべてに─、ナンセンスと─、撃て!
平坦な─、電脳の─、海上で─、確信に─、接近せよ!
奮い立て! 湯を沸かせ! 静かに眠れ!
思索、試作、詩作せよ!


インコ誕生までのあらまし

一日目。生の意味の消滅により、絶対者も好きなことも無意味化する。
二日目。ヒト、モノ、情報が国境を越えて流れて乱れる(グローバリゼーション)。あるいは逆に、国境や境界線の内側に流れてよどむ(ローカリゼーション)。よっ て、救世主登場の気運が高まる。
三日目。インコが卵から孵る。
四日目。インコの目が開く。
五日目。綿毛が生えそろう。
六日目。尾羽が伸びる。
七日目。インコが巣立つ。それを待って、人間は分析を開始する。インコに帰属するある萌芽思想が生まれる。
八日目。理論と説教が要請される既存の社会思想に変わり、自発的で自在なインコ萌 芽思想が発展し、典型となる。
九日目。思想はさらにインコを指向し続け拡大する。
一〇日目。最高のよき理解者が増える。
一一日目。鳥になる人がちらりほらり現われる。
一二日目。羽毛の海ができるほど、あたりは鳥で覆われる。
一三日目。すこし鳴き声がうるさい。
一四日目。鳥の高体温により気温が急上昇する。陸地が減り海が増える。
一五日目。インコはおしゃべりが好きだし、寒いよりは温かい方が適しているし、広 いスペースを必要としないので特に問題はなし。
一六日目。めでたしめでたし。
ちなみに、現在は七日目のあたりであります。



インコのフーガ

私がインコになってから
先端少女ってほめられる
だけどときどき
宇宙人ってけなされる
気にしてないよ
インコだもん

インコになるといいことあるよ
バロメータが振り切った
抽出機能が高まった
アンドロギィユニスに間違えられた
ウミウシくんの背中をさすった
風に吹かれてそわそわしちゃうね

お腹が空いたら共食いするよ
インコも食べるよ
オウムも食べるよ
おいしいらしいよ

死んだのならばインコはいらない
だって筋の運びが図式的
生きているならインコがお似合い
繰り返されるの、インコのフーガ

 



日清日露の子ども勢力

子ども相手だからって、まったく容赦してないところが気に入ったわ!
恵比須さまが本気で鯛を釣っていた明治三〇年に今から行きましょ。

浮遊する金魚のおもちゃがたらいに遊ぶ。
宝づくしのおめかしセットに、遊郭の憧れ。
千代紙の竜田川には紅に染まったもみじが流れる。
行きすぎるのはセルロイド製のおしどり夫婦。

子持ちガエルが平泳ぎのまま、あとに続くわ。
子どもらは七つ数えて福の神を仰ぎ見る。
すると豊かな感情がおはじきに触れる。
だるま、軍配、招き猫がドロップとなって一列に並んだ。

光をよく通すそれらは、
旭の御旗がいくら激しく振られても、
いかずちのごとく冴えわたった電荷を帯びて、
大吉の到来を力強く予感させているのですわ。


カフェブーム

鳥籠の中のアイドルことエリス鳥は、今日もごっきげん。
そして、カフェに座っている。
昼間からアルコールを注文して、 自分がずいぶん大人になったことを感じている。

隣の席に、よくモノを落とす人が座った。
名も知らぬ彼女は、私がカフェにいる間じゅうモノを四度も落とした。
確かにテーブルは、つるつるとした材質の表面だったけれど
彼女以外の人がモノを落とすことは一度もなかった。
彼女のまわりだけ特別に引力が強かったのかもしれない。
あるいは、このカフェの中にテレポーテーション能力のある人がいて
彼女にわざといたずらを仕掛けたのかもしれない。

コーヒーを飲み終えた彼女は、私の方をにらみつけた。
そして、大きなバッグを抱え持ってバタバタと店を出ていった。

私は彼女が見えなくなるまでその後ろ姿を眺めていた。
そして視線を、読みかけのドゥルーズ=ガタリ著『アンチ・オイディプス』に戻した。
彼らは書いていた。
「オイディプスは厳密には何の役にも立たないというのが正しい」
私は思った。
「引力も超能力も厳密には何の役にも立たないというのが正しい」

私の思ったことは、ドゥルーズ=ガタリの発言よりたぶん正しい。


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