Ellis in Wonderland


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セーラーちゃん

ヘビの誘惑にのせられて、今日は少女になっちゃった。ヘビはサタンって言われてるけどそうかしら? ヘビさんだってインコちゃんだってほんとうは紙一重よ。だって、かわいいインコの脚を見たことがある? インコのあんよはピンクのうろこ。へびさんだっておんなじうろこ。羽根はうろこが軽くなっただけ。インコもヘビも、白い殻から生まれた宇宙開闢以来の奇蹟よ。ヘビはサタンじゃありません! エリスはインコが何より好きなの。だからインコに似てるヘビさんも大好き。

髪を高い位置にふたつに結わくの。エリスは少女のころを思い出してる。ホットケーキを焼くのが大好きだった少女時代。バニラのにおいのお粉とミルクを混ぜましょ。思い切って卵を割るけど、ためらいは無用よ。あとできちんとインコちゃんとヘビさんには許しを請うもの。どろどろのソースを熱いプレートに流し込んで、ふわふわの太陽をつくるよ。ぷくぷくしてきたらひっくり返すの。皆既日食はふんわりこんがり! スプーンとフォークをかちゃかちゃ鳴らして、天国の香りを封じ込めた聖なる小麦粉の焼き上がりを待つよ。バターにゃんとシロップぴょんもわくわくしてるって。

紺と白のセーラー服を着るの。外は雨。だからエリスはお着替えをする。制服ってストイック。ちょうど、春風に飛び乗って高い山の頂上付近にまで駆け上がった小さなピイちゃんが、ふと青い空の果てを思って悲しく喉を鳴らすときのように、紺と白の生地の光はストイック。エリスは不自由で、不可侵で、不可思議な存在。だから少女のホットケーキはもう食べられない。あんなに夢中になった太陽は、過去のものになっちゃった。豪雨であたりが真っ白になったみたいに、白い孤独な太陽はもう行方不明。

エリスを聖母だなんて呼ばないで。聖母はキリストの御許、天に召されて罪に汚れしわれらが衆生を、セーラー服のスカーフのようにやさしく、暖かく癒やすのよ。そう。セーラー服は聖者の印。この白い光の中で、紺の甘いゆらぎの奥底で、いま愛を叫ぶものが、あらかじめ救いを求められた千のラッパと幾万ものソーサーとなって使徒を刺し貫くの。ヘビは千年後に縛りを解かれ、知恵の実を食べたピイちゃんたちは、知恵の御座からかろやかに飛翔して真っ赤な血の海のはるか上方で高くさえずるの。「きゅきゅたん、おかえりなさい」って。

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