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点滅する隠れ家 |

2002年の隠れ家といえばエリスのお家と決まっているけど、1940年代の隠れ家といえばこのお家なのよ。白くて大きいかわいいオウムを飼いたかったでしょうに、彼女、自分のお部屋にオウムの写真を貼って我慢してたわ。
おいしそうな晩ご飯のにおいや、お皿を洗う水の音さえお外に漏らしていないのに、どうして隠れ家は見つかってしまったの?エリスは不思議でならなくて、係りの人に質問したけど、「
I don't know 」って言われちゃったわ。

とにかく街を歩き回ってインコちゃんを探したわ。インコちゃんはいつだっておりこう。エリスのつまらないおしゃべりに、一日中付き合ってくれるの。インコちゃんなら、なぜ隠れ家がバレたのか、その答えを知っているような気がするよ。だけど、小鳥市をやっているはずの広場に小鳥の影はなかったし、小鳥を扱うペットショップも見つからなかった。歩き疲れて座り込んだ異国のお空に、幾筋もの飛行機雲が彼女の日記の表紙のような模様を作った。雲は風に流れてほんわかにじんで、くたびれたエリスをいたわってくれたの。

無垢な少女が綴るクローズド・ダイアリーは、初夏の風のように聡明で、だけどもソーダ水の炭酸みたいに儚い。2002年のまだ真っ白な日記帳に、エリスはどんな言葉を書いたらいいの?なぜ隠れ家は見つかったのか、そこから書き出さなければ、日記は至極ありふれた、下世話なものへと堕ちてしまう。たとえ隠れ家が、誰かによって密告されたのだとしても、はじめの一ページには想像上の犯人の名を書かなくちゃならない。いえ、色のない絵の具なのだから、残酷なことにはなりはしないわ。いまエリスのいるところは、だあれも知らない、時間もはしゃぐ秘密の隠れ家。ただし、いつでもアクセス可能な、誰でも覗ける、インコも知ってる明け透けの隠れ家。エリスはまだ見ぬ日記のページをひとりまさぐる。