Ellis in Wonderland


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おねいさんが上海に殺到



「ぬいぐるみじゃないんだから、お箸くらいちゃんと持てるようになるわよ」。エリスはフォーチュン・クッキーをボリボリつまみながら、上海にそびえ立つ虹的高層密閉宮の踊り場で、困り顔の子パンダさんに勝ち誇ってみせます。子パンダさんの黒いお耳はかなりの地獄耳で、三千年以上も前に揚子江のほとりでささやかれた自分への悪口だって、よく覚えているくらいです。すべてのパンダさんが、いつでもたれ目で悲しげなのは、後ろ向きのそのお耳のせいです。一方で、そんなお耳のおかげでやたらと人間に庇護されているとも言えます。子インコの写真集はないのに、子パンダさんの写真集はとてもたくさんあるからです。


さて、エリスのクッキー占いの結果は「天真爛漫」と出ました。「無作為にやって、またこれだわ。やっぱり私、インコのおねいさんなのね」。もちろん語句の解釈は聞き手次第ですから、何でもインコに引き付けて考えるのは自由です。

 「溶けた鑞はもうひとりの私。固まる炎は肩にとまるインコ」

インコのおねいさんはお人好しの舞姫を気取って、美しい指をぴんと伸ばし、電脳のこの地を自由自在に吟遊します。ところが、ふさふさおなかの子パンダさんはいつまで経ってもユーラシアから出られずに写真ばかり撮られているので、たまにはお肉をヤケ食いしたいなと思っているようです。子パンダさんはあまりにも赤ちゃんなので、「でんぐりがえしではエリスおねいさんに負けないもん」と言って、クッキーを紙ごとボリボリしてしまいました。その仕草を「かわいい」と捉えたカメラたちが、いっせいにカシャンカシャンとざわめきます。エリスおねいさんは、光を受けて、しなやかな笹のようにポーズを決めています。


ここは横文字が沈黙する大陸の最果てです。エリスはそんなことを知ってか知らずか、柔らかなニットの編み目からこぼれ落ちた思索の卵たちを、ひとつひとつ漢字におこしてゆきます。鳥にあって、エリスにないものは悪知恵です。一方、子パンダにあってエリスにないものは人気です。悪知恵と人気とインコとを、おねいさんの双の肩にのせることができたとき、はじめてエリスの胡蝶が夢を見ます。インコは胡蝶と仲良しをして、書に精を出すおねいさんのまわりではしゃぎます。あんまりバサバサ飛びすぎるので、嵐になる一歩手前までいきますが、 そんなことすら、おねいさんは、電脳という風土の中で言葉矢として語り明かしてしまうのです。子パンダさんはエリスを気にして、いちいち聞き耳を立てますが、さすが人気者だけあって日々是勤勉です。そして今日も、お箸を上手に持つ練習に明け暮れています。インコのおねいさんは、そんな子パンダさんをちょっとうらやましく思いながら、遠くかすむインコ楼を、ぱっちりお目々を黒々させて見つめ続けているのでした。

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